世界中にたくさんのスペイン語を母国語とされる方がおられます。
日本企業が中南米、南米に進出していること、
さらに、アニメやマンガの世界的人気により、
未だスペイン語圏の方で、日本語を学ばれる方は、多くおられます。
そこで、日本語をスペイン語圏の方に教える際に考える教科書ですが、
一般的な教科書として有名なのは、「みんなの日本語」と「まるごと」でしょう。
では、実際教えてみて、「みんなの日本語」と「まるごと」という教科書の手ごたえは、
どうな感じなんでしょうか?
私は、実際南米ペルーで、日本語教師として日本語を教えているのですが、
実際日本語をスペイン語圏の人に、「みんなの日本語」と「まるごと」を用いて、
教えてきた個人的な感想をシェアしたいと思います。
みんなの日本語
まず古くから、スペイン語圏日本語教育において、
一番メジャーな教科書といえるのが、「みんなの日本語」だと思います。
上の写真、だいぶ使い古した感じで汚れていて、すみません;
「みんなの日本語 ローマ字版」がおすすめです。
「みんなの日本語」にもいくつかのバージョンがありますが、
初心者が最初に勉強するのが、「みんなの日本語 初級I 第2版」になります。
ただ「みんなの日本語」を実際に、
南米ペルーのガイドさんとホテルマンのたまごの生徒たちに教えてみて、
思ったことがいくつかあります。
- ローマ字
- 日本に住む外国人向け
- 情報量
ローマ字
一つ目として、ローマ字が意外とわかりにくいようだということです。
ローマ字は、英語圏の人を教えるのには、良いと思うのですが、
スペイン語圏の人に教える際、基本的には発音が似ていてわかるものの、
わかりにくい子音があることがわかりました。
たとえば、「ha ハ、hi ヒ、hu フ、he ヘ、ho ホ」がスペイン語圏の人には、
「ha ア、hi イ、hu ウ、he エ、ho オ」と勘違いしてしまうことです。
他にも、「ja ジャ、ji ジ、ju ジュ、je ジェ、jo ジョ」が
「ja ハ、ji ヒ、ju フ、je ヘ、jo ホ」と勘違いしてしまったりもします。
もちろんのみ込みの速い生徒や言語が得意な生徒には問題ないのですが、
基本的に大半の生徒がローマ字の発音を完全に習得するまでに、苦戦します。
できれば、スペイン語圏向けの「みんなの日本語」として、
スペイン語のアルファベットの発音で日本語の発音を表記したバージョンを
出版して欲しいです。
日本に住む外国人向け
「みんなの日本語」の内容が基本的に日本に住む外国人向けであることから、
日本に住んでいる外国人や日本に行く予定のある外国人には、
日本の文化を学ぶことができ、とても良いのですが、
日本に行く予定がなく、日本人観光客を将来的に相手にする海外の人にとっては、
本のシチュエーションが難しいようです。
もちろん、日本の文化を説明すると興味を持ってくれる生徒もいるのですが、
日本の文化を説明するのに時間がとられ、
要点である教えたい文法がわかりにくくなってしまうようです。
海外で日本人観光客を相手にする生徒さん様の内容のバージョンも出版して欲しいです。
情報量
あともう一つの点は、約150時間で、「みんなの日本語、初級I」を全て学ぶことができるように
デザインされており、単語も1000文字ほど学ぶようにデザインされているわけですが、
それでも、情報量が多すぎて、意味がわからなくなり、ギブアップする生徒が多くいます。
一つの課にだいたい3~6の文法的要点があるのですが、その文法を見出しのように、
説明はしていませんし、その課で学ぶ単語の一覧が各章にあるわけでもありません。
そのため、ポイントがわかりにくくなってしまうようです。
日本語を学ぶ意欲が強く、言語が得意な生徒は問題ないのかもしれませんが、
学びたいけど、言語に苦手意識のある生徒には、難しいようです。
「みんなの日本語、初級I 教え方の手引き」
その改善策として、「みんなの日本語、初級I 教え方の手引き」という
先生向けの教本の文法のポイントを見出しのように、
まず生徒に教えています。
私が使っているのは、少し古いので、こちらが最新になります。↓
「みんなの日本語、初級I 翻訳・文法解説スペイン語版」
さらに、単語に関しては、「みんなの日本語、初級I 翻訳・文法解説スペイン語版」という
先生向けの別の教本から各課の単語表をコピーし、ローマ字をふって、
渡してあげています。
私が使っているのは、少し古いので、こちらが最新になります。↓
なので、各課に学ぶ分法を見出しとして組み込み、
各課の最後に学んだ新しい単語の一覧を加えて頂けるとさらに良いと思います。
まるごと
次に、「みんなの日本語」に代わる教本として、
多く利用されているのが「まるごと」という教科書です。
その理由としては、さらにシンプルで、実用的、そして、
日本の実際の生活で見られる写真を載せていることです。
「まるごと」の実際のタイトルは、「まるごと 日本の言葉と文化」です。
その「まるごと 日本の言葉と文化」というタイトルからもわかるように、
「まるごと」も日本に住む外国人向けに作成されているので、
海外で日本人を接客する目的で日本語を学ぶ人には、
少しシチュエーションがずれてしまっています。
「まるごと」にもいくつかのバージョンがありますが、
初心者が最初に勉強するのが、「まるごと 入門 A1」になります。
「まるごと 入門 A1」といっても、3種類あります。
「まるごと 入門 A1 りかい」、「まるごと 入門 A1 かつどう」、
「まるごと 入門 A1 ごいちょう」です。
- まるごと 入門 A1 りかい
- まるごと 入門 A1 かつどう
- まるごと 入門 A1 ごいちょう
まるごと 入門 A1 りかい
「まるごと 入門 A1 りかい」は、言語知識の学習を中心にデザインされた教科書です。
「まるごと 入門 A1 りかい」は、「みんなの日本語 初級I 第2版」と似ています。
「みんなの日本語 初級I 第2版」をさらに、シンプルにした感じです。
まるごと 入門 A1 かつどう
「まるごと 入門 A1 かつどう」は、言語パフォーマンスの学習を中心にデザインされた教科書です。
「まるごと 入門 A1 かつどう」の良いところは、日本の生活に役立つ日常会話が具体的に
扱われていて、練習できるところです。
まるごと 入門 A1 ごいちょう
「まるごと 入門 A1 ごいちょう」は、「まるごと 日本の言葉と文化」の
「りかい」と「かつどう」で学ぶ約1000の単語をトピック別にまとめた
単語帳のような教科書です。
「まるごと 入門 A1 ごいちょう」には、日本語の発音のアクセント表記が書かれています。
ただ可能であれば、スペイン語と同じアクセント記号で表したバージョンが出版されると
スペイン語圏の方の日本語学習スピードはさらに速くなると思います。
まとめ
スペイン語圏日本語教育における教科書で、一番広く使われている代表的な教科書
「みんなの日本語」と「まるごと」を簡単にご説明しました。
実際どちらの教科書も教科書通り使用してみて思ったのは、
大半の生徒がついて来れないということでした。
個人的に、「まるごと 入門 A1 かつどう」は、とてもおすすめです。
ただ海外に住んでいて、観光客として日本人を相手にするために日本語を学んでいる生徒の
日本語能力を上げる手段は、それぞれの個性や能力に合わせて様々です。
アニメや漫画、もしくは、アイドルや歌が好きな生徒、
もしくは、日本の文化や歴史に興味がある生徒は、
教えやすいですし、成長しやすいです。
なので、文化に興味を持ってもらうというのも悪くありません。
日本の歌のフレーズを一緒に歌ってみたり、単語を覚えるためにゲームを一緒にした方が、
効果的に学べることもいます。
ただどちらにせよ、日本語を教えるにあたって、教科書通りまじめに教えても難しいので、
教える文法と単語を極力少なくし、白板に書かせて、解かせてみたりして、
反復練習させた後、実際に実演形式でしゃべらせて、体で覚えさせる方が実用的です。
なんだかんだ頭で覚えられる生徒よりも体で覚えることができる生徒のほうが多いです。
日本の文化は世界中に知られていますが、
ぜひ日本語という言語を学びたいという外国人の生徒さんたちがギブアップせずに
楽しんで習得していってもらいたいですよね。
それでは~! Hasta luego!
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